短編小説 – 大きな桜の木の下で

春の訪れを告げるように、満開の桜が青空を背景にその美しさを広げていた。風がそっと吹くたびに、淡いピンクの花びらが舞い落ち、まるで雪のように地面を彩る。その光景はまさに夢のようで、現実と幻想の狭間にいるような不思議な感覚を覚えさせるようだった。
だが、その桜の木の下で、僕は手に汗を握りながら実は立っていたのだ。
僕の名前は降谷健太、16歳。目の前には彼女、中学時代からずっと好きだった人がいる。
彼女の名前は茜。明るくて優しくて、いつも周りを笑顔にする存在だった。
僕が初めて彼女に惹かれたのは、入学式の日。新しい環境に緊張していた僕に、彼女が
「よろしくね!」
と笑顔で声をかけてくれた瞬間だった。
「ねえ、どうしたの?こんなところに呼び出して。」
茜が首をかしげながら、不思議そうな顔で僕を見つめる。その瞳は桜の花びらよりも透き通っていて、僕の心臓はさらに速く鼓動を刻んだ。
「あ、うん。えっと……」
言葉が喉元まで出かかっているのに、どうしても声にならない。こんなにも緊張するとは思わなかった。
風が吹き、彼女の髪がふわりと揺れる。その瞬間、僕は覚悟を決めた。
「茜、聞いてほしいことがあるんだ。」
彼女は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔つきになり、僕の言葉を待ってくれた。その優しさに背中を押されるように、僕は続けた。
「ずっと言えなかったけど……中学の頃から、君のことが好きだった。君と一緒にいると、どんな時でも楽しくて、どんな困難も乗り越えられる気がする。だから、その……これからも君と一緒にいたい。僕と付き合ってください。」
言い終わった瞬間、胸の中で何かが弾けたような感覚がした。緊張と不安で頭がいっぱいだったけれど、それでも言葉にできたことに少しだけ安堵した。
茜はしばらく何も言わず、桜の花びらが舞う中でじっと僕を見つめていた。その沈黙が永遠に続くような気がして、不安はさらに膨らんでいく。
しかし次の瞬間、彼女はふわりと笑った。その笑顔は春の日差しよりも温かくて、僕の心を一瞬で溶かした。
「ありがとう、健太。」
彼女は僕の名前を呼びながら、小さく頷いた。
「私もね、実はずっと健太のこと好きだったんだよ。」
その言葉に耳を疑った。まさか彼女も同じ気持ちでいてくれたなんて…想像すらしていなかった。
「え?本当に?」
思わず確認してしまうと、茜はくすくすと笑いながら答えた。
「本当だよ。こんな時に嘘なんてつかないってば」
その瞬間、僕たちの間には確かな絆が生まれた気がした。桜の花びらが舞い落ちる中で、僕たちはお互いを見つめ合い、小さく微笑み合った。
遠くから聞こえる子どもたちの笑い声や、鳥たちのさえずりさえも祝福してくれているようだった。この日、この桜の木の下で交わした約束は、一生忘れることのない大切な思い出になるだろう。
そして僕たちは、新しい春と共に、新しい一歩を踏み出した。
あとがき
新しい春と新しい一歩を同時に踏み出す。まさに絶頂!
あえて卒業の時ではないのは、なんとなくそれも?現実ではありえそうな?的な?
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