短編小説 – 帰り道の出会い
- 2025.04.06
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夜の帳が降りる頃、私は車を運転して自宅へ向かっていた。仕事の疲れが体に重くのしかかり、早く家に帰って休みたいという思いが強かった。
道路は静かで、街灯の光がアスファルトをぼんやりと照らしている。そんな中、ふと目に留まったのは道路の脇に見える小さな影だった。
出会い
車を少し減速させながら近づいてみると、それは一匹の子犬だった。まだ幼い様子で、毛は少し汚れており、痩せているように見える。
周囲を見渡しても飼い主らしき人影はなく、子犬は力なく座り込んだまま私の車のライトをぼんやりと見つめていた。その姿にはどこか切なさが漂っており、放っておくことはできないと直感的に感じた。
車を道路脇に停め、エンジンを切ると静寂が訪れる。
私はゆっくりと子犬に近づきながら、その様子を観察した。怯えた様子もなく、むしろ疲れ切ったような目で私をじっと見つめている。
しゃがみ込んで手を差し出すと、子犬は警戒することなくその手に鼻を近づけてきた。その瞬間、私の心に何か温かいものが広がった。
「どうしたんだ?一人ぼっちでこんなところに…お前、大丈夫か?」
私は子犬に優しく声をかけた。もちろん返事があるわけではないが、その小さな体が震えていることに気づき、急いで車に戻り毛布を取り出した。
子犬を毛布で包むと、その温もりに安心したのか小さく体を丸めた。私は子犬をそっと撫でた。
「ちょっと冷えてるし、ここでうずくまっててるだけじゃ、さすがにまずい気がするけど…」
このまま放置することはできない、と私は決断した。
「良し。この子は連れて帰ろう!」
この子犬が迷子なのか捨てられたのかはわからない。しかし、少なくとも今夜は安全な場所で休ませてあげたいと思った。
「私と一緒に暮らさない?」
私は子犬を毛布ごと抱き上げ、車に戻り、車の後部座席にそっと置いた。そして再びエンジンをかけ、自宅へ向かった。
新しい家族
自宅に到着すると、まずは子犬が安心できる場所を作ることから始めた。リビングの隅に毛布を敷き、水と簡単な食べ物を用意した。
子犬は最初こそ怯えた様子だったが、しばらくすると少しずつ落ち着きを取り戻し、用意した水を飲み始めた。その姿を見て、私はほっと胸を撫で下ろした。
「良かった。とりあえず大丈夫そう」
翌日、地元の動物病院へ連れて行き健康状態を確認してもらうことにした。獣医師によれば、大きな病気や怪我はないものの栄養不足が見られるとのことだった。また、首輪もつけていないため飼い主がいる可能性は低いとのことだった。
私はその言葉を聞き、この子犬を自分で引き取ることを決意した。
その後の日々は新しい家族としての生活が始まった。子犬には「ハル」と名前をつけた。
その名前には春のような暖かさと新しい始まりへの願いを込めた。
ハルは日に日に元気を取り戻し、家中を駆け回るようになった。その姿を見るたびに、私の心には喜びが満ちていった。
責任と愛情
動物を飼うということは簡単なことではない。それには責任と時間、そして愛情が必要だ。しかし、ハルとの生活を通じて学んだのは、それ以上に得られるものがあるということだった。
ハルは私に無条件の信頼と愛情を示してくれ、その存在は日々の疲れやストレスを和らげてくれる大切なものとなった。
また、この経験を通じて動物保護についても考えるようになった。日本では未だ捨てられる動物や保護施設で暮らす動物が多く存在している。その現状について知ることで、自分にできる小さな行動から始めようと思うようになった。
ハルとの出会いは偶然だったかもしれないが、その偶然が私の人生に大きな変化をもたらしたことは間違いない。
そして…
帰り道で出会った一匹の子犬。それは単なる偶然ではなく、私にとって新しい家族との出会いであり、大切な使命への第一歩でもあった。
この経験を通じて学んだことは、人間だけでなく動物にも同じように愛情と尊重が必要だということだ。そして、小さな行動でも世界を少しずつ変える力があるということだ。
ハルとの生活はまだ始まったばかりだが、その毎日は私にとってかけがえのないものとなっている。
この物語が誰かの心に響き、一匹でも多くの動物が幸せな未来へつながるきっかけとなれば幸いだと思う。
あとがき
飼う事の責任放棄駄目、絶対!
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