短編小説 – 世代を超えた友情

ある秋の午後、静かで少し広めの公園のベンチに座る一人の老人がいた。
彼の名前は三津屋一郎、近所では親しまれる存在で、毎日同じ時間に公園へやってくることで知られていた。
今日も彼はいつものように、古びた帽子をかぶりながら、木々の間を吹き抜ける風を楽しんでいた。
「おじいちゃん、何してるの?」
突然、小さな声が彼の耳に届いた。
振り返ると、小学生くらいの女の子が立っていた。
髪を二つに結び、リボンをつけたその子は、興味津々といった顔で三津屋さんを見つめている。
「おや、小さな探検家さんかい?」
三津屋さんは微笑みながら尋ねた。
「探検家じゃないよ!ただ…おじいちゃん、いつもここにいるから、何をしてるのかなって思っただけ。」
女の子は少し恥ずかしそうに答えた。
「そうかそうか。実はね、ここで昔のことを思い出しているんだよ。」
「昔のこと?」
三津屋さんは少し目を細めながら、遠くを見るような表情をした。
「そうだよ。若いころ、この公園で友達とよく遊んだり、大切な人と時間を過ごしたりしたんだ。このベンチも、その頃からずっとあるんだよ。」
「へえ!すごいね!」
女の子は目を輝かせた。
「おじいちゃん、どんな遊びをしてたの?」
三津屋さんは笑いながら答えた。
「そうだなぁ…竹馬や縄跳び、それから鬼ごっこやケイドロもよくやったな。でも一番楽しかったのは、友達と一緒に秘密基地を作ったことかな。」
「秘密基地!?」
女の子は驚きと興奮が入り混じった声を上げた。
「どこに作ったの?」
「この公園の奥にある大きな木の下さ。今でもあるんじゃないかな。」
「見てみたい!」
女の子は立ち上がり、今にも走り出しそうだった。
「待ちなさい。」
三津屋さんは優しく手を挙げて止めた。
「一緒に行こう。昔話をしながら案内してあげるよ。」
こうして二人は、公園の奥へと歩き始めた。
途中、三津屋さんは若いころの思い出話を語り、女の子はそれに耳を傾けながら、時々質問を投げかけた。
やがて、大きな木の前にたどり着いた。
そこにはかつて秘密基地だった場所があったが、今では草木に覆われていた。
それでも三津屋さんは懐かしそうにその場所を眺め、女の子もまた、その歴史に触れるようにそっと木に手を当てた。
「ここが秘密基地だったんだね…」
女の子がつぶやいた。
「そうだよ。ここでたくさん笑って、たくさん夢を語り合ったんだ。」
三津屋さんは穏やかに答えた。
その日以来、女の子は時々三津屋さんが公園に居るたびに一緒に公園を散歩するようになった。
そして二人は、新しい秘密基地を作る計画を立て始めた。
それは世代を超えた友情の始まりだった。
あとがき
今現在で実際にこんな事が起こって子どもの親がその光景を目の当たりにした時、下手したら通報されて警察沙汰になりかねないような気もしないw
昔はこんなちっさな物語は普通にあったかもしれません。
今と昔の違いはその他にも町を歩けばあちこちに転がっています。是非みなさんも、違いを探してみるのも良いのではないでしょうか? 探しているうちに、いつの間にか人との友情が芽生えるかもしれませんよ?
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